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清藤 一; 市川 達也*; 花屋 博秋; 佐藤 良成*; 金子 広久; 春山 保幸; 渡辺 宏*; 小嶋 拓治
Radiation Physics and Chemistry, 78(11), p.961 - 965, 2009/11
被引用回数:3 パーセンタイル:24.52(Chemistry, Physical)MeV級電子加速器を用いた殺菌や高分子材料の改質などの放射線加工には、おもに三酢酸セルロース(CTA)線量計が使われているが、線量測定と共用できる線量計があるとトレーサビリティ確保の上でも効果的である。そこで線について既に線量計特性が明らかになっているRadix WのMeV級電子線量への適用拡大を目的として、両者による線量,電子線量との整合性及びRadix Wの照射後の応答安定性を調べた。この結果、線と電子線の整合性は3%以内で一致しており、MeV級電子線量にも、Co線量標準を応用できることがわかった。また照射終了後24時間以内において吸光度が時間とともに最大で3%下がるが、応用が想定される実プロセスで6時間以内においては1%以内で安定した。以上よりこれまで明らかにされた線量範囲1150kGyに加えて、放射線加工における電子線量範囲1060kGyについても、適用できること及びトレーサビリティ確保が容易な線量との整合性が得られることが明らかになった。
永田 寛*; 本多 照幸*; 岩月 輝希; 水野 崇
no journal, ,
天然環境中で生じる地層処分にかかわる類似現象(天然の微量元素の岩層中での挙動等)に着目し、堆積岩中の化学的風化部や炭酸塩充填部の主要及び微量元素濃度を定量し、酸化及び高アルカリ条件下における微量元素の挙動を推測した。その結果、化学的風化を受けた岩石中では、顕著な微量元素濃度の変動は認められなかった。一方で、炭酸塩充填部近傍では、U及びThの濃集が観察された。これらの濃集には、炭酸錯体の形成がプロセスの一つとして考えられた。
辻村 憲雄; 吉田 忠義; 布宮 智也*; 青山 敬*
no journal, ,
ICRP Publ.74の中性子フルエンス-個人線量当量換算係数のエネルギー依存性と入射角度依存性に合致するフルエンスレスポンスを持つ線量当量測定器を開発した。
河裾 厚男; 前川 雅樹; 別役 潔*
no journal, ,
同時計数ドップラー拡がり測定法により得られる物質の電子運動量分布は、空孔型欠陥の微視的同定に有用である。実測された電子運動量分布を詳細に考察するためには、理論計算との比較が不可欠である。従来の擬ポテンシャル法を用いた第一原理計算では、内殻付近の波動関数が正確でないため、特に遷移金属の電子運動量分布が精度よく再現できない問題点が指摘されている。精度よく電子運動量分布を計算するためには、全電子法を用いる必要がある。ここでは、実測データと計算の照合を迅速に行うために、Bloehlが開発したProjector Augmented Wave法を実装するABINIT4.6.5を用いて価電子状態計算を計算した。内殻電子波動関数は、ClementiとRoettiによって与えられた修正Slater関数によるもので代用した。得られた電子状態に対して、二成分密度汎関数法により陽電子波動関数を計算し、電子-陽電子運動量分布を得た。第2周期から第6周期までの多結晶及び単結晶試料を用いて、同時計数ドップラー拡がり測定を行い、計算結果と比較した。その結果、実測データがおおむね再現できることが確認できた。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)-41-In表面は120K以下で8'2'構造へ相転移し、金属-絶縁体転移を起こす。光電子分光の結果では、この相転移は電荷密度波の形成を伴ったパイエルス転移であると考えられている。しかし、低温の8'2'構造の原子配置が決定されておらず、相転移のメカニズムの詳細については未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いた8'2'表面の構造解析と走査型トンネル顕微鏡(STM)像の観察,第一原理シミュレーションの結果について報告する。RHEPDの解析から、41構造はX線回折実験で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。8'2'構造については、理論的に提案されている2つの構造モデルを参考にして、ロッキング曲線のフィッティングを行った。RHEPDの解析から、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、RHEPDの解析から決定した8'2'構造の原子位置を用いてSTM像を第一原理的に計算したところ、完全ではないがSTM像の観察結果を説明できることがわかった。また、バンド構造計算から、この構造では約60meVのエネルギーギャップが現れ、120Kで見られる金属-絶縁体転移が説明できることがわかった。
河村 弘
no journal, ,
国内で放射性同位元素(以下「RI」という。)の製造を行っている試験研究炉としては、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)の原子力科学研究所が有するJRR-3及びJRR-4、大洗研究開発センターが有する材料試験炉(Japan Materials Testing Reactor。以下「JMTR」という。)が挙げられる。現在、JMTRは平成23年度の再稼動を目指し、改修を行っている。再稼動後の産業利用拡大の一つとして、放射性医薬品である99mTcの親核種である99Moの製造を検討している。ここでは、各試験研究炉(JRR-3, JRR-4及びJMTR)を用いたRI製造の現状とJMTRを用いたRI製造に関する今後の展望について紹介する。
正木 信行; 中田 正美; 赤堀 光雄; 荒井 康夫; 中村 彰夫; 佐藤 修彰*
no journal, ,
発表者らはメスバウア分光法によっておもに酸化物中のメスバウア核周りの局所構造を研究してきた。U-238をメスバウアプローブ核として、U核について対称性が低いウラン化合物のひとつであるUOS(Uranium oxysulfide)についてメスバウアスペクトルを10Kから室温の範囲で測定した結果、室温では無反跳分率が小さいためスペクトルピークが幾つか明確にできないが、低温では四極子分裂による2つのスペクトルピークが観測された。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Ge(111)--Sn表面は、220K以下になると33構造へ相転移する。この相転移は、2次元系のパイエルス転移として関心を集めたが、その後Sn原子が熱的に揺らいだモデルなどが報告され、現在も研究が行われている。また最近、この表面は30K以下で再び構造を形成することが報告され、注目を浴びている。この相転移は、光電子分光の結果からモット転移であると考えられている。しかし、相転移のメカニズムやSn原子の変位に関しては、未解決のままである。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、Sn/Ge(111)表面からのロッキング曲線をさまざまな温度で測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、それぞれの相転移前後における原子変位について報告する。構造と33構造からのロッキング曲線の測定から、220Kでの相転移では、Sn原子の平衡位置は変化しないと考えられる。また、RHEPD強度の温度依存性の測定において、低温相(33構造)で、フォノンのソフト化を伴った強度の減少が見られた。現在、さらに低温での測定を進めている。
深谷 有喜; 松田 巌*; 橋本 美絵; 成田 尚司*; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)--Ag表面上に微量のAgやAu原子を吸着させると、表面電気伝導度の急激な上昇を伴って、超構造が発現する。この超構造は、さまざまな手法を用いて調べられており、吸着原子種(Ag,Au)によらず同一の原子配置をとっていると考えられる。最近の研究では、Si(111)-52-Au表面上へのAg原子吸着によっても、超構造が発現することがわかった。この新しい-(Au,Ag)超構造の原子配置は、現在のところ全く不明である。本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、新たな-(Au,Ag)超構造の原子配置を決定した。-(Au,Ag)超構造からのRHEPDパターンの強度分布は、これまでの超構造からのものに似ていた。さらに、さまざまな入射方位でロッキング曲線を測定したところ、わずかなピーク位置のずれはあるものの、それらの形状もこれまでのものに似ていることがわかった。以上の結果から、新たな-(Au,Ag)超構造の原子配置は、これまでの超構造とほとんど同一であることが示唆される。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
結晶表面における電子ビームのエネルギー損失過程は、理論的には古くから調べられており、表面プラズモン励起が主要な過程であることがわかっている。最近では、反射高速電子回折(RHEED)を用いて、実験的に表面プラズモンの励起過程が詳細に調べられている。一方、陽電子を用いた結晶表面でのエネルギー損失過程の研究は非常に少ない。そこで本研究では、エネルギー分析器を備えた反射高速陽電子回折(RHEPD)装置の開発を行い、陽電子回折の特徴である全反射陽電子ビームのエネルギー損失スペクトルを測定した。Si(111)-77表面からの全反射条件下における鏡面反射強度のエネルギー損失スペクトルを測定したところ、ゼロロス近傍にて明瞭な2つの損失ピーク(約10と20V)が観測できた。これらのピークは、それぞれ1回,2回表面プラズモンを励起したものに対応する。また、ゼロロスピークに比べ、これらの損失ピークの強度が大きいことから、全反射した陽電子は、表面プラズモンを多数励起していることがわかった。
柳澤 和章; 久米 民和
no journal, ,
費用対効果(Cost benefit effect)は、付加価値が付いた製品出荷額div製品が市場化されるまでの投資額で表記される。放射線利用の経済規模は、一部又は全部を放射線利用することで完成した製品の出荷額(Shipment)を、公開データ等により単年度ベースで求めて金銭表示した結果を指すので、費用対効果の分子部分を明らかにする作業とも言える。内閣府から委託された調査の結果、生活基盤を構築する原子力発電の経済規模は4兆7,410億円であり、9電力5万人余の従業員が働いている。一方、放射線利用の経済規模は4兆1,117億円である。原子力利用は8兆8,527億円、エネルギー利用と放射線利用の割合は54%対46%(前回平成9年では61%対39%)となる。まさに車の両輪となって本体(日本経済)を支えていることがわかる。原子力利用の合計値約8兆8,500億円は、対GDP比1.8%である。
山下 真一; 勝村 庸介; Lin, M.; 前山 拓哉*; 室屋 裕佐*; 村上 健*
no journal, ,
重粒子線はほかの一般的な放射線と比べ、特異な照射効果を与える。この特異性は重粒子線が形成する飛跡(トラック)構造すなわち放射線分解生成物の分布の高密度さに起因すると説明されているがトラック構造やそのダイナミクスに対する知見は十分ではない。実用上重要な中性水溶液にガン治療で用いられているほど高エネルギーの重粒子線を照射する場合に関しては、なおさらである。そこで、これまで放射線医学総合研究所の重粒子線加速器HIMACからのガン治療用GeV級重粒子線を用い、水分解生成物の0.1sにおける収量(一次収量)を測定してきた。この0.1sという時間は局所的に生成する初期生成物の拡散がほぼ落ち着く時間あるいはトラック内反応がほぼ終了した時点と言え、一次収量はトラック構造を強く反映する。本研究はこれまでの一次収量測定結果を適切に記述するパラメータすなわちトラック構造をより適切に記述するパラメータの検討と拡散モデルシミュレーションによって従来から提案されているトラック構造モデルの有効性評価を目指した。
前山 拓哉*; 山下 真一; Baldacchino, G.*; 室屋 裕佐*; 田口 光正; 木村 敦; 勝村 庸介
no journal, ,
近年さまざまな分野に拡大している放射線利用の一つにガン治療がある。水が生体細胞の主成分であることからその放射線分解生成物の挙動は間接効果のメカニズム解明において重要である。特にOHラジカル(OH)が最も重要であるためその検出や収量測定は重要である。実際の治療で用いられる線量(24Gy)で生成するOHはMに未満であり感度よく検出することが必要なため、本研究ではOHの収量評価に吸光測定よりも感度の高い発光測定を適用することを目的とした。この際OH捕捉剤としてCoumarin-3-carboxylic acid(CCA)を用いた。CCAはOHを捕捉した後その一部がケイ光体7OH-CCAに安定化することが知られているが捕捉反応から安定化までの詳細な反応経路は不明なため、主要な水分解ラジカルである水和電子(e)やOHとの反応性の調査や反応機構の同定も目的とした。
前山 拓哉*; 山下 真一; Baldacchino, G.*; 田口 光正; 木村 敦; 勝村 庸介; 村上 健*
no journal, ,
放射線医学総合研究所HIMACでガン治療用重粒子線をCoumarin-3-carboxylic acid(CCA)水溶液に照射し、ケイ光プローブ7OH-CCA生成収量からOH収量の時間挙動を評価した。イオン種を変化させ、OHの時間挙動やそこから推察されるトラック構造についても検討した。従来の吸光分析による測定と比べ、線量は二割程度で十分であり結果もよく対応していた。
澤田 真一; 河裾 厚男; 前川 雅樹; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*; 前川 康成
no journal, ,
陽電子消滅寿命(PAL)測定法を用いて、架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を基材とする電解質膜の構造解析を行った。比較のため、架橋PTFE膜及びスチレングラフト膜の測定も行った。架橋PTFE電解質膜中には、半径0.280.30nmと0.440.45nmのサイズの自由空隙が存在することがわかった。小さい方の自由空隙はPTFE結晶領域及びポリスチレンスルホン酸グラフト鎖領域に位置し、一方、大きい空隙はPTFE非結晶領域に位置することが明らかとなった。
石井 里美; 鈴井 伸郎; 石岡 典子; 河地 有木; 伊藤 小百合; 大竹 憲邦*; 大山 卓爾*; 藤巻 秀
no journal, ,
ダイズの根に共生する根粒菌は根粒を形成し、空中の窒素を固定する。根粒は固定した窒素(固定窒素)を他の部位に輸送することで植物体に窒素栄養を供給する役割を持つ。これまで根粒による窒素固定の活性はアセチレン還元活性測定法を、固定窒素の輸送については15N標識法を用いて研究されてきた。しかし、これらの方法は侵襲的であるために、例えば光や温度の変化に対する数時間内の窒素固定や固定窒素の輸送の変化といった、環境変化に対する短時間の生理的な応答を解析することは難しかった。そこで本研究では13Nにより標識した窒素ガス(13N標識窒素ガス)を用いて、窒素固定の活性及び固定窒素の輸送を非侵襲的にイメージングし、定量的に解析することを目的とした。本発表ではその窒素固定イメージングを可能にする13N標識窒素ガスの製造に成功したので報告する。
高橋 宏行*; 勝村 庸介; Lin, M.; 室屋 裕佐*; 熊谷 友多; 工藤 久明*
no journal, ,
高温高圧水の放射線化学反応は、現行の軽水炉の冷却水管理に重要である。本研究では、芳香族化合物の一つである安息香酸イオンを用いて、水の放射線分解反応の一つであるOHのpKa値を高温まで測定することを目的とする。また、これに関連して安息香酸水溶液の放射線反応を実験的に検討し、OHとの反応中間体の吸収スペクトル特性,OHとの反応速度定数の温度依存性を測定した。
Lin, M.; 勝村 庸介; 室屋 裕佐*; Fu, H.*; 高橋 宏行*
no journal, ,
パルスラジオリシス法を用い、水の放射線分解におけるOHラジカルの生成収量を室温から高温(400度)高圧(25MPa)の超臨界状態まで測定した。OHラジカルは最も重要な酸化性生成物であり、原子炉構造材の腐食にも強く関係すると考えられているため、その生成量や挙動を正確に把握しておくことは重要である。これまで幾つかの報告があるが、評価手法に必ずしも問題点がないともいえず、これらの点を吟味しつつ先行研究における報告値との比較も行った。
Fu, H.*; 勝村 庸介; Lin, M.; 室屋 裕佐*; 端 邦樹*
no journal, ,
カルノシン(ベータアラニルLヒスチジン)は脊椎動物の骨格筋のタンパク質以外の部分に最も多く存在する物質の一つである。カルノシンやその類似化合物はヒト以外のほ乳類細胞にも多く存在することが報告されている。これらの物質は一重項酸素をよく捕捉するため優れた抗酸化剤としての機能を有する。しかし、そのような機能の詳細なメカニズムはよくわかっていない。そこで本研究ではパルスラジオリシス法を用いたカイネティクス観測などにより活性酸素との反応性などについて検討を行った。
Zgardzinska, B.*; 平出 哲也; Goworek, T.*
no journal, ,
n-CHで120Kと170Kの間で温度を変化させ、その際のポジトロニウム形成強度の時間変化を観測した。その結果、120Kから170Kへ移行すると陽電子の拡散距離の変化によってポジトロニウム形成強度は増大するが、その後、時間とともにポジトロニウム形成強度は少しずつ減少していくことがわかった。陽電子の拡散距離の増大と同様に、イオン化の際に放出された電子の拡散距離も増大していると考えられ、捕捉電子密度の飽和過程には電子の拡散距離の変化が影響していると考えられる。飽和炭化水素であるn-CH中では、おそらく飽和密度での捕捉電子間の平均距離は数十nm程度と考えられ、この距離が電子の平均拡散距離を表していると考えられる。